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「アンジェラスの鐘」と祈り

授業を終え、学生が帰ったあとの夕刻の教室にしばし佇んで手を合わせる。夕暮れが寂しく感じられる季節、いつも以上に「祈り」を意識する。

 帰途へと向かう道の両端にはあかあかと夕陽に照らされた田畑が広がる。そんな中、ふとフランスの名画、
ミレーの『晩鐘』の絵を思い起こした。一日の労働を終えた、貧しい農家の夫婦が祈りを捧げている絵だ。

 調べてみると、この絵の原題は「
L'Angelus(アンジェラス)」と言い、「エンジェル(天使)」を意味する言葉で、朝、昼、夕の祈りの時を知らせる教会の鐘の音が、そう呼ばれていたのである。その鐘の音を聞くと、人々は手を休めてこのような祈りを唱えた。

「・・・神よ、み使いのお告げによって、御子が人となられたことを知ったわたしたちが、キリストの受難と十字架をとおして、復活の栄光に達することができるよう、恵みを注いでください。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン」(カトリック教会の祈祷文参照)。

 これは「お告げの祈り」と呼ばれ、おとめマリアが、天使ガブリエルから受胎告知を受けたことを心に刻む祈りだという。描かれている二人のしぐさ・・・両手を重ね頭を深くたれる妻、帽子をもって頭を下げて祈る夫。彼らのこの祈りの中には、定められた祈祷の言葉をこえる、さまざまな願いが込められていたことだろう。そんな二人の敬虔な祈りの声と、アンジェラスの鐘の音が画面から響き渡ってくるようだ。さらには夫婦の互い対する熱い信頼と、神に委ねる確かな信仰も伝わってくるのである。

 あらためて思う。祈れることは本当に幸いなことである。どんなに今が厳しくとも、辛くとも、祈りは明日の希望をもたらしてくれる。祈りは私たちを、命の根源である神としっかり結び付けてくれるからである。 また祈りは天に帰られた人々との繋がりをも確かにしてくれる。ちなみにこのミレーの絵には、彼が幼い日に受けた祖母のあつい信仰の影響があるという。祖母はミレーに、亡くなった人々をも覚えて祈るようにと教えていたそうだ・・・。

 仕事を終えた今夜も、心して祈りたい。明日を信じて・・・。祈りは、主に在って生きる者も召された者も、過去も未来も、天と地をもその一切を結んでくれるのである。



1113日説教「神の姿」要約:

「御子は、見えない神の姿であり・・・」(コロサイの信徒への手紙115)

聖書によれば、人と神とは絶対的に異なる存在。神と人との間にはなんらの連続性もない。その見えない、知り得ないはずの神を啓示し、見せてくださった御方、それが御子イエス・キリストなのだ。
by aslan-simba | 2016-11-10 21:36 | Comments(0)

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