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こころの手袋

 今、日本が、世界が大きな問題に直面している。作業中のパソコンを打つ手も痛み、かじかむ。何か心温まるものがないかと、思いついたのが、新見南吉の童話『手袋を買いに』だった。読みながら物語の世界に吸い込まれて行った。

 狐の親子の住む森・・・雪遊びをしてく洞穴へ帰って来た子狐は、「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と言って、濡れて牡丹色になった両手を母さん狐の前に差し出す。母狐は、子狐が「しもやけ」になったらかわいそうだと思い、人間の街にある手袋を買わそうと決意をする。そこで子狐の片手を人間の手に変え、白銅貨二枚持たせ、人間の前では決してきつねの手の方を出してはならないと話した。

 「人間はね、相手がきつねだと分かると・・・掴まえて檻の中に入れちゃうんだよ、人間ってほんとに恐いものなんだよ」と。かつて母狐は、人間にひどい目に遭わされた経験があったのだ。

 さて、その晩、手袋を買いに人間の街に初めて行った子狐は、目当ての店に辿り着き、戸をたたく。そして、「このお手々にちょうどいい手袋下さい」と言うのだが、店の中からもれてくる光のまぶしさに、間違えて狐の手の方を差し出してしまう。それでも店の人は、子狐の持参したお金が木の葉でないことを確認して、手袋を持たせてくれた。子狐は、人間は決して恐くないと思った。

 帰りがけに、人間の家から、子どもを寝かしつけるやさしい母親の声が聞こえて来た。「森の子狐もお母さん狐のお唄をきいて、洞穴の中で眠ろうとしているのでしょうね」と・・・。それを聞いて子狐は母狐が恋しくなり、走って森へ帰る。

 洞穴へ戻った子狐は、心配しながら待っていた母狐に、「母ちゃん、人間ってちっとも恐かないや」と語り、人間の街での出来事を話す。安堵した母狐はこうつぶやくのだった。「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」と。

 お読みになった方も多いだろう。私たちの日々の現実が「かじかみ」、「しもやけ」にならないようにと、温さで包んでくれるような物語だ・・・。ここに、あらためて世界の人々の真の平安を祈りたい。




☆2月1日「怪力サムソン」説教要約:
「サムソンは主に祈って言った。『わたしの神なる主よ。私を思い起こしてください。神よ今一度だけ私に力を・・・』」(士師記16:28)
 愛人の裏切りで、力の源である髪を切られ、捕らわれ身となった英雄サムソン。しかし最後は、神に祈り、力を頂き、敵を倒して、祖国を救うのである。
by aslan-simba | 2015-01-30 17:14 | Comments(0)

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