散りゆく紅葉

 お経に「独生独死独去独来(どくしょう、どくし、どっこ、どくらい)」(無量寿経)という言葉があります。人間という存在は「生まれるのもひとりなら、去る時もひとり」ということです。事実、私たちの誰もが、やがては親しい者たちと別れ、ひとりで旅立って行かねばなりません。「人間は本来的に孤独な存在」と言えるでしょう。
 そんな自分たちの姿に思いを馳せる時、こんな句が脳裏を走ります。「裏を見せ 表を見せて 散るもみじ」。良寛の辞世の一つだそうです。秋の日差しの中に、一枚のもみじが裏を見せて表を見せて散って行く。いよいよ今生の命が尽きる時に、ひとりぼっちだった人間の、これまでの生き様が洗いざらい見えるということでしょうか。
 随分前に、この句について、あるカトリック司祭がこう記していました。「小さな己のはからいや自我を天然の風(プネウマ)にまかせきって、ふわっと自由に生きていこうとした良寛の姿勢が鮮やかにこの句のなかにうつしだされている。」(井上洋治『私の中のキリスト』)と。また、司祭はその一枚を、十字架で孤独な死を遂げられた主イエスにたとえて語ります。「ゴルゴタの十字架上で泥まみれになった一葉の紅葉は、かくて爽やかな秋風を私たちに告げてくれた、いやそれ以上に真の秋風のすばらしさを私たちにもたらしてくれたのである。のちに弟子パウロは、師イエスの生涯を偲びながらガラテヤの人たちにむかって次のように勧告している。“聖なる風に己れをまかせきってお生きなさい。それがキリスト者の生き方です“」(『まことの自分を生きる』)と。孤独な自分たちであるがゆえに、風=プネウマ=聖霊、つまりキリストの霊に徹頭徹尾委ねて生きて行けるのだ、と示されます。
 深まり行く秋、紅葉の時の到来は間近です。新緑の季節から強い日差しの夏を経、秋を迎え、いよいよ冬間近に散っていく紅葉・・・。これからの季節、秋風を感じながら、そんな散り行く葉の姿に孤独な自分と、共にあるキリストの御姿に思いを馳せるのも悪くありません。
 そして、すべての葉が落ちた後に、喜びのクリスマス、新たな生のはじまりの時が訪れることを覚えたいものです。


☆11月3日聖徒の日礼拝の説教「主は羊飼い」要約:
「命のある限り 恵みと慈しみはいつもわたしを追う。 主の家にわたしは帰り 生涯、そこにとどまるであろう」(詩編23:6)。
 今日は聖徒の日、私たち自身もやがては 聖徒の列に加えられることも覚えたい。終わりの来る一生。残された人生に「何をなすか」は大切なことだが、どこに目を向けて生きるかということはもっと大切ではないか。主に導かれ、 帰るべきところに向かってこそ、私たちの限られた人生もまた、永遠の意味を持つのではないだろうか。

11月第一日曜日は聖徒の日、亡くなった方々を心に刻んで礼拝する日です。お彼岸のキリスト教版とでも言いましょうか。いつも通り10:30から礼拝を行います。どうぞお気軽にお越しください。

☆11月10日(日)桃山栄光教会ミニ・バザー予定:
同日の礼拝後にミニ・バザー(ガレージ・セールの規模?)をやろうと思っています。是非、ご来会下さい。
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by aslan-simba | 2013-10-31 09:20 | Comments(0)

いのちの希望

 「諸行無常、会者定離は世の習い」(平家物語)と言いますが、今まで私たちはどれほどの死と出合い、向き合い、別れの悲しみを味わってきたことでしょうか。とくに身近で親しい者の死は、その人を失った喪失感と共に、自分がして上げることのできなかった無念の思いをも残して行きます。死のとげの傷みは容易に癒えるものではないのです。
 けれども、死によってすべてが終わるのものではないことを知る時、私たちは多少なりとも安らぎを得ることができるはずです。そこに、私たちの生死を超えた「大いなる命」との繋がりを教える宗教の存在意味があるのです。
 キリスト教の信仰においては、キリストに在る「新たな命」、「復活の生」が教えられています。使徒パウロは言います。「この朽ちるべきものが朽ちないものを着、この死ぬべきものが死なないものを必ず着ることになります。この朽ちるべきものが朽ちないものを着、この死ぬべきものが死なないものを着るとき、次のように書かれている言葉が実現するのです。『死は勝利にのみ込まれた。死よ、お前の勝利はどこにあるのか。死よ、お前のとげはどこにあるのか。』」(コリント一15:54-55)と。
 讃美歌はこう歌います。「親は我が子に、友は友に、妹背あい合う、父のみもと、雲はあとなく、霧は消えはて、同じみすがた、ともに写さん、やがて会いなん、愛でにしものと、やがて会いなん」(489)。
 天の御国で、私たちは既に亡くなった多くの愛する者たちと喜びのうちに再会することができるというのです。この復活の信仰は論理や理屈ではありません。キリスト自身の復活という「信仰の事実」に基づく希望であり、神の恵みによって、信じて祈る者に拓かれる境地なのです。
 この復活信仰が今を生きる私たちに呼びかけていること、それは辛い思いに苛まれ続けることではなく、故人のためにも、今の時を、この日を精一杯に希望をもって励むことなのです。一日一日のいのちを大切に生きる。その一日一日の積み重ねが、自分の一生となり、御国への確かな歩みとなります。



☆10月27日説教「命に与る」要約:
 「現世は地獄だ」という人がいる。しかし、どんなに悲惨なことがあり、悲しみと苦しみに満ちあふれていようとも、ここは「地獄」(ゲヘンナ)―神から見捨てられてしまった世界―などではない。この世界は、神がキリストを遣わされ、罪の贖いの十字架を打ち立てられた場所なのである。神が私たちの赦しを宣言し、御自分との交わりへと入れて下さった世界・・・だから、そこには神に見捨てられた人生はない。私たちは、神の赦しに与かり、神との豊かな交わりに生きる生へと招かれているのだ。

10月27日(日)の礼拝後に、宇治のスタンプラリーに参加します。よろしかったらご一緒しませんか。
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by aslan-simba | 2013-10-24 23:15 | Comments(0)

Adversity makes a man wise.

 「艱難汝を玉にす」、「忍の一字は衆妙(しゅうみょう)の門」、働き盛りだった頃の父が、そんな言葉をよく口にしていた。いずれも「人間は多くの辛い困難や苦労を経験してこそ、人として成長できる」ということだ。こういった諺を口にすることによって、父は自らを鼓舞していたのだろう。
 先日、ある英書で「Adversity makes a man wise.(逆境は人を賢明にする)」という英語表現に出合い、あの頃のことを思い出していた。思えば私自身―まだまだ若いつもりだが―その辺りの父の年齢は、既に過ぎてしまった。そのせいもあろうか、これまでの拙い人生経験と様々な出会いから、そういった言葉の真意がつかめるようになってきた。
 それゆえ人が大きな困難に遭遇し、悩みの淵に立たされ、今は、その苦労の意味が見出せなくても、それが将来的には必ずや人生の大きな宝に変えられるものと信じたい。神が与えて下さった人生には、何ひとつ無駄な経験はないと思うからだ・・・。
 新旧約聖書には苦悩・艱難をバネに人生行路を雄々しく辿った人物が数多く登場する。中でも、文字通り艱難につぐ艱難を耐え忍び、衆妙(天地万物の深遠な道理)をキリストに在って体得した使徒パウロは、こう語るのである。
 「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」(ローマ5:4)、「だれがキリストの愛からわたしたちを引き離すことができましょう。艱難か。苦しみか。迫害か。飢えか。危険か。剣か。・・・しかし、これらすべてのことにおいて、わたしたちは、わたしたちを愛してくださる方によって輝かしい勝利を収めています」(8:35,37)と。すなわち、いかなる艱難や苦悩のせめぎにあっても、最後に勝利するのは決して艱難や苦悩ではなく、どこまでも神の愛なのである。
 私たちのこの世の歩み、この先にも待ち受ける困難は未だあるかも知れない。それでも、神の愛の勝利をどこまでも信じ、揺らぐことのない者でありたいと願う。


☆10月20日説教「神の養い」要約:
 旧約聖書には、「逆境を通じて神に養われる」という経験が数多く記されています。ヨセフ物語だけではありません。たとえば民全体・・・出エジプトの民は荒れ野で40年を神に養われました。バビロンの捕囚の地では50年に渡る養いを受けています。逆境、試練を経験してこそ、聖書の人々は、一歩先に進めたのです。このことは、私たちの信仰生活にも通じることではないでしょうか。どんな厳しい状況に置かれていても、神に養われるということ、その事実に気づきたいものです。
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by aslan-simba | 2013-10-17 20:09 | Comments(0)

祈りつつ待つ今日

 「一日は貴い一生である、これを空費してはならない」(内村鑑三『一日一生』)。
 金木犀の香る朝、あらためて思う。今日という日は二度と来ない。現在という時は、今ここにしかない。元に戻すことも、止めることもできない時の流れの中に、私たちが生きているということを・・・。この与えられた今日という日を、精一杯生きて行きたいものだ。神さまに心から感謝して。
 以前は朝目覚め、一日が始まることを、自分にとってなかば当然のことのように思っていた。しかし、明日も今日と同様の朝を迎えられる保証は、どこにもないのだ。「一寸先は闇」と言われるが、私たちには自分の未来を正確に予知する能力は、持ち合わせていないのである。
 突然の病で、厳しい闘病生活を続けて来た知人がいる。今は人生最後の日々を、主の御手の内に在って、祈りながら過ごしている。彼女が自分よりも年若いことを考えると辛いが、ご主人をはじめ家族が思いを一つにして看病にあたる姿に慰めを覚える。
 ふと、こんな御言葉を思い起こす。「主に望みをおき尋ね求める魂に 主は幸いをお与えになる。主の救いを黙して待てば、幸いを得る」(哀歌3:25-26)と。望みつつ待つ、そこに希望がある。心静かに希望を捨てずに、待つことのできる人間でありたい。
 人生、私たちは若かった時には、青雲の志を抱き、未来を無限のもののように思っていたかも知れない。それはそれでよい。若者の特権だろう。けれども、年齢を重ねるに従って、人は過ぎ行く時の中で、限られた人生を生きざる得ないことに気づかされる。先は必ずしも長くはない。だからこそ、「今日」という日が、尊く貴重なのである。その今日という一日、大きなことはできなくとも、誰かのため、何かのために、祈り、待ち望もうではないか。そのような一日一日の積み重ねが、私たちに「幸い」を与え、生涯の充実をもたらすのである。 
 いつか御国で主と顔と顔を合わせてお会いできる日を心に刻み、今日も天を仰いで歩んで行こう。どこまでも高く澄み渡る秋の空を見上げながら。


☆10月13日説教「信なき信」要約:
「父親は言った。『幼い時からです。霊は息子を殺そうとして、もう何度も火の中や水の中に投げ込みました。おできになるなら、わたしどもを憐れんでお助けください』イエスは言われた。『「できれば」 と言うか。信じる者には何でもできる』その子の父親はすぐに叫んだ。『信じます。信仰のないわたしをお助けください』」(マルコによる福音書9:23)
 大変な状況を前にした時、人は信じるしかありません。キリストにおいて現される神の憐れみと御力を信じ、主に寄り頼むしかないのです。
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by aslan-simba | 2013-10-10 10:00 | Comments(0)

二度とない今日

  「咲く花はいつしか散りゆく運命(さだめ)あり 限りある命を美しく燃やす 人は花の如き限りある空蝉(うつせみ)を うぬが生きる意味を 探し迷い歩く・・・」、時折立ち寄る古本屋チェーン店(ブックオフ)で、四、五年前によく流されていた「浅き夢見じ」という歌。若手の男性シンガーソングライターの手によるもので、歌詞には「いろは歌」も織り込まれていた。
  「色はにほへど散りぬるを 我が世たれぞ常ならむ 有為の奥山今日越えて 浅き夢見じ酔ひもせず」と、古くからの日本人の「無常観」が、現代音楽で軽快に再現されていた。
  今日、秋色に染まりつつある道を行きながら、ふとその曲が口をついた。季節の移り変わりが敏感に感じられるこの時期のせいか・・・。
  無常観―旧約聖書の預言者も、同様にこの世の無常を知っていた。「草は枯れ、花はしぼむ。主の風が吹きつけたのだ。この民は草に等しい。草は枯れ、花はしぼむが、わたしたちの神の言葉はとこしえに立つ」(イザヤ書40:7-8)と記す。
  無常と言えば、随分前に、あるお寺の門前にこんな言葉が掲げられていたことも思い出す。「無常に耐えて強く生きよう、二度とない今日のいのち」。そこにイザヤ書の語る「神の言葉」を重ねてみると、「二度とない今日のいのちをしっかり生きよ」と響く。だから今がどんなに辛く、どんなに大変な時でも、まっすぐ前を向いて進んで行きたい。今日ここに、二度とない大切な命を、大切な時間を与えられていることに感謝して・・・。
  外は暗くなってきた。秋の夕陽はつるべ落とし。こおろぎの音が聞こえる。「二度とない人生だから  一匹のこおろぎでも  ふみころさないように  こころしてゆこう どんなにか よろこぶことだろう」(坂村真民)。
  世の無常を知りつつも、永遠なる方に支えられ、「生きよ」と導かれる私たちは、自らの命と共に、一匹のこおろぎの命も大切にできる感性を、同時に持ちたいものである。



☆10月6日説教「目を向ける」要約:
「わたしたちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです」」(コリントの信徒への手紙二4:18)
 パウロの人生にとって決定的な意味を持ったのは、神を心底信じることでした。それによって彼は、いかなる艱難の中にあっても、落胆せず、希望を捨てずに最後まで雄々しく歩めたのです。私たちも今、パウロと同じ信仰に招かれています。
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by aslan-simba | 2013-10-03 19:48 | Comments(0)

〒612-8006 京都市伏見区桃山町大島86-29             京阪桃山南口より徒歩8分 ほっこりした教会、牧師の飼い犬です。
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