白露は地に滋く

長かった夏休みも終わり、登下校する子供たちの姿を見かけるようになった。日中は相変わらず汗ばむものの、朝夕はしのぎやすい。暦の上では七日から、白露(はくろ)に入る。この時期、夜中に大気が冷え、早朝、草木や花々に露が結ぶところから、そのように言われる。 白露・・・なんとも美しい表現だ。明け方の白い陽の光の下で、玉のようにきらめき輝く水晶のような白い露をリアルに言い表している。 ただ、「露」という言葉には、どこか「はかなさ」、「こわれやすさ」また「あっけなさ」といった無常観が感じられる。 唐の時代に、すべてを投げ打って、名高い詩人になろうとしたものの、そうなれずに、虎になってしまった男の話がある。中島敦の『山月記』、その物語のクライマックスの景色を記した一節を思い起こす。「時に、残月、光冷ややかに、白露は地に滋(しげ)く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた」。情景が眼前に浮かぶようだ。虎になった男は、自らの思いのたけを旧友に語り、再び山中へと消えて行く。白露の季節、その夜明けの冷たさの下を。 私たちも今、仲秋の入り口に立っている。耳を澄ませば虫たちの音色に気づく。秋という短いとき、背後には長く厳しい冬の予感があることは否めない。しかし、たじろがず、おそれずに、清々しいこの季節の恵みの内を、新たな希望を抱いて雄々しく歩んで行きたい。
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by aslan-simba | 2008-09-06 09:14

〒612-8006 京都市伏見区桃山町大島86-29             京阪桃山南口より徒歩8分 ほっこりした教会、牧師の飼い犬です。
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