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KANO 

 今から三十年前のサラリーマン時代。台湾の田舎に出張した際、地元のバスに乗ったものの、目的地の停留所が分からずに困ったことがあった。日本語も英語もなかなか通じないため困惑していた私に、運転手をはじめ、乗り合わせていた乗客みんなが助けてくれようとした。夕方だったので、その大半は部活動帰りのジャージ姿の高校生たちだった。わけても一人の男子生徒は、その停留所を特定し、一緒に降りて目的地までわざわざ同行してくれた。心根の本当に優しい台湾の人々、純粋な高校生たちの姿に心底感動した。

 先日、「KANO 1931海の向こうの甲子園」という台湾映画を見ながら、そんな台湾出張の記憶が重なり、胸が熱くなった。

 映画は日本統治下にあった昭和6(1931)年に甲子園初出場を果たした台湾代表チーム(嘉義農林学校野球部。KANOはユニフォーム記された学校の略称:嘉農かのう)の物語。実話に基づく話だが、地元で一勝もできなかった彼らが、日本人監督の熱血指導の下に、みるみる力をつけ、甲子園で決勝に進出するほど成長するのである。真摯に野球に取り組むその野球部員たちの顔が、あのバスの中で出会った高校生たちの顔と、どこか重なるような思いもした。

 なお「KANO」には、日本人技師、八田與一(はったよいち)も登場する。当時、台湾総督府に在籍していた八田は、嘉農が位置する台湾南部の嘉南平野に水利施設とダムを建設し、作物の生育が難しい嘉南平野を、穀倉地帯へと変貌させたのである。台湾を愛し、台湾の人々のために体をはって奮闘した八田、今なお台湾の教科書にその業績が詳しく紹介されていると聞く。

 映画を見た後、「KANO」のプロデューサーがこの映画製作に関わり、こんな趣旨の発言をしていたのも知った。「(台湾も日本も)、互いに過去に非常に輝かしい誇り高い歴史もあった。そういったところから自信を取り戻し、どんなことがあっても恐れることなく、(未来に)向かっていくということが大事だと思う」と。

 歴史にとって、また私自身にとっても、過去、現在、未来を結ぶ、人と人との心の絶えざる繋がりを、真摯に覚えさせられるような映画だった。それをもといに、主に在って「万事が益となる」(ローマ書8:28)ことを信じたい。



☆2月15日説教「栄光を帰す」要約:
「ペトロは我に返って言った。『今、初めて本当のことが分かった。主が天使を遣わして、ヘロデの手から、また ユダヤ民衆のあらゆるもくろみから、わたしを救い出してくださったのだ』」(使徒言行録12:11)
 囚われたペトロ、へロデ王の手の内に置かれたわけです。しかし真の支配者なる神は、その中においても具体的に働かれた。神は閉ざされた現実の中においても、確かに働かれるのです。
by aslan-simba | 2015-02-13 21:08 | Comments(0)

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